昔話『ねずみのすもう』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 『ねずみのすもう』は、「でんかしょう、でんかしょう」というネズミが相撲すもうさいのかけごえがとても印象的いんしょうてきなおはなしです。

 今回こんかいは、『ねずみのすもう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『ねずみのすもう』は、明治めいじ昭和時代前期しょうわじだいぜんき活躍かつやくした民俗学者みんぞくがくしゃ佐々木喜善ささききぜんが、自身じしん地元じもとである遠野地方とうのちほう(岩手県南部いわてけんなんぶ)を中心ちゅうしん青森あおもり岩手いわて秋田あきた宮城みやぎ各県かくけんより採集さいしゅうした東北地方とうほくちほう民話みんわ集大成しゅうたいせい昭和しょうわ6ねん(1931年)に三元社さんげんしゃより発行はっこうされた『聴聞草紙ききみみぞうし』に「ねずみ相撲すもう」という題名だいめい収録しゅうろくされたことにより日本中にっぽんじゅうひろられるようになりました。

 そのも昭和43年(1968年)に未來社みらいしゃより発行された『日本にっぽんの民話 みちのくの民話 別巻一べっかんいち』で「ねずみのおすもう」という題名で紹介しょうかいされたり、さく: 神沢利子かんざわとしこ: 赤羽末吉あかばすえきちによる絵本えほんが昭和58年(1983年)に偕成社かいせいしゃより発行されたり、現在げんざいまでしたしまれている民話です。

 絵本えほんねずみのすもう (どもがはじめてであう民話みんわ 5)』はポプラしゃから出版しゅっぱんされています。大川悦生おおかわえっせいさんのぶんは、「でんかしょ でんかしょ」などの擬音語ぎおんご擬態語ぎたいご使つかわれていることで、こえしてむとリズミカルな文章ぶんしょうたのしむことができます。梅田俊作うめだしゅんさくさんのは、素朴そぼくなのに情緒じょうしょあふれ、表情ひょうじょうゆたかなので、とても魅力的みりょくてきです。

 偕成社かいせいしゃより出版されている絵本『ねずみのすもう (絵本・日本にっぽんのむかしばなし)』にも、「でんかしょ でんかしょ」などの擬音語や擬態語が使われています。神沢利子かんざわとしこさんの文と赤羽末吉あかばすえきちさんの絵により、おじいさんやネズミなどの登場人物とうじょうじんぶつが、まるでまえでしゃべっているような感覚かんかくになります。ひと動物どうぶつ親切しんせつにするこころ大切たいせつさをおしえてくれる絵本です。

 ほるぷ出版より出版されている絵本『ねずみのすもう (幼児ようじみんわ絵本)』にも、「デンカショ デンカショ」などの擬音語や擬態語が使われています。樋口淳ひぐちあつしさんのテンポのい文と二俣英五郎ふたまたえいごろうさんの素朴そぼくな絵が絶妙ぜつみょうからい、とても心地ここちよくおだやかな気持きもちになる絵本です。

 現在げんざいは、筑摩ちくま書房しょぼうより出版しゅっぱんされている佐々木ささき喜善きぜんの『聴耳ききみみ草紙ぞうし』には、いにしえの日本にっぽんいきづいていた不思議ふしぎな、愉快ゆかいな、奇想きそう天外てんがいな、あるいはこわ物語ものがたりがぎっしりとまった、日本人にっぽんじんこころ故郷ふるさとともいうべき珠玉しゅぎょく物語ものがたりしゅうです。

 未來社みらいしゃより出版されている『みちのくの民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 別巻べんかん1)』は、くるしい生活せいかつのなかからまれた生産せいさん知恵ちえなど、東北六県とうほくろっけん民衆みんしゅう日常生活にちじょうせいかつ直結ちょっけつしたおはなし数々かずかず各県かくけんごとに採集さいしゅうした珠玉しゅぎょく民話集みんわしゅうです。

あらすじ

 むかしむかし、おじいさんがやま柴刈しばかりをしていると、どこからともなく
 「でんかしょ、でんかしょ」
とかけごえこえてきました。
 こえほうってみると、二匹にひきのネズミが相撲すもうっていました。ふとったネズミは長者ちょうじゃのネズミで、せたネズミはお爺さんのいえのネズミでした。
 お爺さんは痩せているネズミがけっぱなしのことをあわれんで、からだおおきくなるようにともちをたくさんつくってネズミにべさせてあげました。

 すると翌日よくじつ、痩せたネズミは太ったネズミに負けない相撲を取れるようになりました。
太ったネズミがどうしてきゅうつよくなったのかとたづねると、痩せたネズミはお爺さんの作った餅を食べたからだとこたえました。
 それをいた太ったネズミは、今晩こんばんくらなかからおかねをたくさんっていくから、その餅を食べさせてしいとたのみました。

 そのよる、お爺さんは二匹のネズミのために餅とあかいふんどしを作ってあげました。つぎ、二匹のネズミは赤いふんどしをめて
 「でんかしょ、でんかしょ」
って相撲を取り、お爺さんはそれをよろこびました。

解説

 害獣がいじゅうとしておもかべるねずみですが、鼠は多産たさんであることから子宝こだから子孫繁栄しそんはんえい象徴しょうちょうとされてきました。また、ひろ大黒様だいこくさまとしてしたわれている大国主命おおくにぬしのみこと神使しんしは鼠とされています。

 そのことから、鼠は豊穣ほうじょう財福ざいふくの象徴とされ、「」というがつけられ、はたらものざいたくわえるという印象いんしょうがあります。

 このような鼠にたいするかんがえから、民話みんわの『ねずみのすもう』はまれたのでしょう。

感想

 きゅうつよくなった理由りゆうを、しげもなくかすことができるせたネズミのふとぱらでケチケチしない姿すがたに、あこがれをいだいたかたおおいのではないでしょうか。

 このよう精神的せいしんてき豪快ごうかいな姿を「気前きまえい」などと表現ひょうげんしますが、気前が良いとそれだけで他者たしゃからの印象いんしょうが良くなります。それは、見返みかえりをもとめてしまうと、その時点じてん恩着おんきせがましくなってしまうからです。

 人間にんげんには自己顕示欲じこけんじよくがあり、やってあげた行為こういたいして見返りを求める気持きもちがあります。そして、期待きたいしただけの感謝かんしゃや見返りがないと愚痴ぐちをこぼします。また、自分じぶんからい行為をしたと宣伝せんでんして称賛しょうさんされようとすることも、見返りを求める行為とおなじです。そういう気持ちは、他者から見透みすかされ、人間性にんげんせいうたがわれ、不信ふしんを抱かれるものです。

 仏教ぶっきょうでは、他者にられないようにひそかにする善行ぜんこうのことを「陰徳いんとく」といます。そして、人知ひとしれず善行をむことを「陰徳を積む」と言います。この「陰徳を積む」ことがめぐり巡って、いつか「陽報ようほう」となってかえってくると言われています。つまり、人知れず善行を積めば、かならずよいむくいをるということです。

 すこしでも利益りえきを得たいという気持ちがある貧乏性びんぼうしょうひとは、見返りを求めた行動こうどう習慣化しゅうかんかしていることがあります。これは、本人ほんにん悪気わるぎはないのかもしれませんが、人間関係にんげんかんけい悪影響あくえいきょうをもたらす可能性かのうせいがあるため、注意ちゅういしたほうがよいでしょう。

まんが日本の昔ばなし

ねずみのすもう
放送日: 昭和51年(1976年)03月20日
放送回: 第0042話(第0024回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 勝井千賀雄
文芸: 沖島勲
美術: 西村邦子(アートノア)
作画: 高橋信也
典型: 致富譚ちふたん鼠譚ねずみたん
地域: 東北地方(秋田県)

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最後に

 今回こんかいは、『ねずみのすもう』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 現在げんざいでは、どちらかといえば、きらわれるネズミですが、日本にっぽんでは大黒様だいこくさま使者ししゃといわれ、古来こらいより吉兆きっちょうとされたものです。『ねずみのすもう』は、面白おもしろくて心温こころあたたまるおはなしなので、ぜひれてみてください!

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