『八つ化け頭巾』は、悪戯好きで愉快な和尚さんが、狐から「八つ化け頭巾」を騙し取り、様々な悪戯をします。一方、狐は和尚さんから貰った「ただの手ぬぐい」を頭に乗せ、美女に化けたつもりでいます。和尚さんが狐から奪った変身道具で、もう一騒動起こすという展開が非常に見応えあります。
今回は、『八つ化け頭巾』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
アニメーションテレビ番組『まんが日本昔ばなし』で紹介されたことで、『八つ化け頭巾』は日本中に広く知れ渡るようになった民話です。
東北地方に伝わる民話として語り継がれていますが、類話は日本各地に分布しています。頓知話の一話となっている場合もあります。
あらすじ
むかしむかし、悪戯好きの和尚さんがいました。
ある日、和尚さんは道はずれの藪の中で一匹のキツネが古びた手ぬぐいを前にして、化け方の練習をしているのを見ました。
和尚さんは、自分もキツネで頭巾を使って化けていると言って、キツネが持っていた化け道具の手ぬぐいと何でもないただの頭巾を交換することに成功しました。
手ぬぐいを持って自分の寺へ戻ると、偉いお坊様と小僧さんが寺にやってきたので、和尚さんはお坊様をからかってやろうと思いました。
和尚さんはお坊様に、二つある部屋のどちらでも好きな方をお使いくださいと案内しました。一つ目の部屋には美しい女性がいて、二つ目の部屋には仏像が安置されていました。お坊様は小僧さんがいる前で女性がいる部屋は選べないので、仏像の部屋を選びお経を唱えていました。しばらくすると小僧さんが居眠りを始めたので、お坊様はこっそりと美しい女性がいる部屋へ行き、酒をご馳走になりました。
しかし、その女性は和尚さんがキツネの手ぬぐいを使って化けていたもので、突然、不動明王に変身し、
「こらっ!この生臭坊主め!!御仏に仕える身でありながら、酒を飲んだ上におなごに手を出すなんてけしからん!!!」
と怒り出したので、驚いたお坊様は大慌てで逃げ出してしまいました。
一方、キツネはというと、騙されたことにも知らず和尚さんの頭巾で娘に化けたつもりになって、そのままの姿で街を歩いていました。
人がキツネを化かすという愉快なお話です。
解説
日本では「八」は漠然と数が大きいことを表す語として使われます。つまり、『八つ化け頭巾』というのは、“色々なものに化けることができる頭巾”という意味です。
本来、狐が人間などに化ける際には、頭に髑髏を載せていました。嘉永2年(1849年)に描かれた『狐草紙絵巻』では、正体を見破られ逃げ出す場面で、狐は頭に髑髏を載せています。
その伝承がいつの頃からか、水草の藻となりただの木の葉となって、今では葉っぱ一枚を頭に載せて化けるというように変化しました。
変身道具が木の葉に変わった理由は、稲荷大明神(宇迦之御魂神)の第一の神使であり、平安時代の陰陽師・安倍晴明の母とされ、人形浄瑠璃および歌舞伎『蘆屋道満大内鑑』の主人公である伝説上の狐「葛の葉」に由来すると言われています。
感想
『八つ化け頭巾』は、すごくのんびりとした穏やかな内容のお話です。
キツネが人を化かすという昔ばなしはいくつもありますが、こちらは人である和尚さんがキツネを化かすという内容です。
そして、さらに驚くべきことにキツネから化けるための道具までをも和尚さんは奪い取り、それを使って様々なものに化けるという、一般的な人とキツネの昔ばなしとは少し違った展開です。
悪戯好きの和尚さんが偉いお坊様に加えたみごとな一撃の場面には、多くの方が拍手喝采したことでしょう。
一方、娘に化けたつもりのキツネが、街中をしゃなりしゃなりときどって歩く姿を想像すると、思わず笑いがこみあげてきます。
まんが日本昔ばなし
『八つ化け頭巾』
放送日: 昭和50年(1975年)01月14日
放送回: 第0003話(第0002回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 上口照人
脚本: 平見修二
美術: 阿部幸次
作画: 上口照人
典型: 宝物交換譚・狐譚
地域: 東北地方
『八つ化け頭巾』は未DVD化のため「VHS-BOX第4集 第31巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『八つ化け頭巾』のあらすじと内容解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
一見、悟りきった顔をした高僧でも、実は心の中にはたくさんの欲望を持っています。つまり、欲望に満ち満ちているのが人間であり、それが偽りのない姿であり、それこそがその人の個性を形成するのです。『八つ化け頭巾』は、健康な人間ならば、誰だって欲望を持っているということを教えてくれるお話なので、ぜひ触れてみてください!