昔話『かしき長者』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 「もったいない」のこころぶ、奇跡きせき物語ものがたり
  『かしき長者ちょうじゃ』の「かしき(かしき)」とは、漁師りょうしとはことなり、ふねって漁師りょうしたちに食事しょくじ世話せわをするひとのことをします。現代げんだいでは食品しょくひんロスが深刻しんこく社会しゃかい課題かだいとなっていますが、『かしき長者ちょうじゃ』は、「ものにもかみ宿やどる」としんじ、丁寧ていねいこころもの大切たいせつにする、正直しょうじき信心しんじんぶかいけれど、まずしいかしきが、「もったいない」の精神せいしん奇跡きせきぶおはなしです。

 今回こんかいは、『かしき長者ちょうじゃ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

概要

 『かしき長者ちょうじゃ』は、愛知県あいちけん三河湾みかわわんかぶ日間賀島ひまかじまつたわる民話みんわです。

 『かしき長者ちょうじゃ』の舞台ぶたいである日間賀島ひまかじまは、めぐまれた漁場ぎょじょうかこまれていることから、ふるくから人々ひとびと生活せいかつしてきたといわれています。

 日間賀島ひまかじま東端とうたんひろがるおだやかな海岸かいがん鎮座ちんざする日間賀ひまか神社じんじゃ境内けいだいには、6~7世紀せいきころ古墳こふんが14存在そんざいし、その古墳こふんからは、石錘せきすい釣針つりばりなどの漁具ぎょぐ多数たすう発見はっけんされていることから、日間賀島ひまかじま人々ひとびとは7世紀せいきには漁業ぎょぎょう生活せいかつをしていたことがうかがえます。

 『かしき長者ちょうじゃ』は、そんな漁業ぎょぎょう中心ちゅうしんである日間賀島ひまかじまみだした、こころあたたまるおはなしです。

 テレビアニメとして放送ほうそうされ、だい人気にんきはくし、長寿ちょうじゅ番組ばんぐみとなった『まんが日本にほんむかしばなし』の絵本えほんです。その絵本えほんが、二見ふたみ書房しょぼうから新装しんそう改訂かいていばんとしてさい登場とうじょうしました。ひとつのケース(1かん)にいち1さつで4さつのおはなしはいっています。1かん~15かん発売はつばいされているので、ぜんかんで60むかしばなしたのしむことができます。「かしき長者ちょうじゃ」は『まんが日本にっぽんむかしばなし だい8かん (新装しんそう改訂かいていばん)』に収録しゅうろくされています。

 『尾張おわり民話みんわ ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 66)』は、未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。現在げんざい愛知県あいちけん西部せいぶにあたる尾張国おわりのくにを、名古屋なごや尾張おわり東部とうぶ北部ほくぶ西部せいぶ知多半島ちたはんとうけ、その地域ちいき民話みんわめぐると、尾張おわりつちくれにみた人々ひとびと息吹いぶきかんじることができます。生命せいめいりょくにあふれた地域ちいき口承こうしょう文化ぶんかを、民俗学者みんぞくがくしゃ小島おじま勝彦かつひこ丁寧ていねい編纂へんさんした本書ほんしょは、貴重きちょう資料しりょうともいえるいっさつです。「山姥やまんばたび役者やくしゃ」「乳花ちばな薬師やくし」「とうげのまごろく」「止々馬木とどめぎられ地蔵じぞう」「テイテイコブシ」「つくり酒屋さかやののた坊主ぼうず」「かし長者ちょうじゃ」など、尾張おわり風土ふうど人間にんげんせいむすいとだと実感じっかんする民話みんわが98ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるしま佐助さすけという間抜まぬけな少年しょうねんがいました。

 佐助はまだりょうたことはありませんが、親方おやかたたのんで食事しょくじ世話せわをする「かしき」として漁にれてってもらえることになりました。
 かしきの仕事しごと想像そうぞう以上いじょう大変たいへんで、漁師りょうし寝静ねしずまったあとも佐助はひとりせっせとはたらいていました。
 佐助はけっしてもの粗末そまつにすることをせず、のこった食べ物はすべて「どうぞ、おあがり」とってさかなべさせていました。

 それから何年なんねんちましたが、佐助は漁師としてではなく、相変あいかわらずかしきとして働いていました。
 ある、また佐助だけ夜遅よるおそくまで働いていると、突然とつぜんなみおとえ、ふねれもまりました。
 不思議ふしぎおもった佐助が甲板かんぱんてみると、うみみずがなくなり、あたりは砂漠さばくになっていました。
 砂漠はつきひかりらされかがやいており、このすななべみがいたらきれいになると思った佐助は、おけいっぱいに砂をつめて船にもどりました。

 翌日よくじつ、このことをひとはなしたのですが、だれしんじてくれませんでした。
 桶いっぱいにとってきた砂をせようと船底ふなぞこりると、桶のなか砂金さきんでいっぱいになっていました。
 親方は佐助のはなしいて、これはかみさまが佐助にさずけたものだから、全て佐助のものだと言い、立派りっぱ長者ちょうじゃとなりました。

 そのも佐助は決して食べ物を粗末にすることはありませんでした。

 いまでも、この島のひとたちはうみに残った食べ物をてるとき「どうぞ、おあがり」と言って、魚に食べさせているということです。

解説

 古来こらい日本人にっぽんじん四季折々しきおりおりのおまつりを大切たいせつにしてきました。お祭りといえば、東京人とうきょうじんならば、お神輿みこし町内ちょうないある光景こうけいをすぐにおもかべることでしょう。しかし、お祭りでもっと重要じゅうようなのは、そのまえおこなわれる「神事しんじ」です。その神事とは、「神饌しんせん」とばれるもの神様かみさまにおそなえして、神様をむかえる儀式ぎしきです。つまり、お祭りは神饌からはじまるということです。

 お祭りとは、神様をあがたっとび、なぐさめながら除災じょさいねがい、豊作豊漁ほうさくほうりょういのる儀式です。日本人にっぽんじんは「自然万物しぜんばんぶつに神様が宿やどる」という宗教観しゅうきょうかんなので、お祭りを始めるにあたって、まずは食べ物を供え、神様をおまねきしなければなりません。そして、お祭りの最後さいごには、お供えした食べ物を神様と一緒いっしょしょくすという「直会なおらい」と呼ばれる儀式があります。直会は、神様と同じ食べ物を一緒にいただくことで、神様と人間にんげん一体感いったいかんち、霊力れいりょくをいただき、神様のご加護かごて、恩恵おんけいあずかります。

 お祭りにおいて神饌は、神様と人間をつなぐ非常ひじょう重要じゅうよう役割やくわりたすものです。これほどまでに、食べ物を大切たいせつに神様にささげるくに日本にっぽん以外いがいにはありません。しかし、現在げんざいは、しょくへの感謝かんしゃこころべるよろこびが希薄きはくになり、ただただ空腹くうふくたすだけの食がえているようにかんじます。

 『かしき長者ちょうじゃ』には、現在の日本人がわすれている、自然のめぐみへの感謝が、脈々みゃくみゃくがれています。

感想

 「もの大切たいせつにしなさい」としかられているどもをにすると、おさなころわたし両親りょうしん祖父母そふぼ先生せんせいからおなじように叱られたことをなつかしくおもいます。

 日本人にっぽんじんおおくは無宗教むしゅうきょうわれますが、子どもに物を大切にするように叱る両親や『かしき長者ちょうじゃ』のおはなしむと、すべてのものにかみ宿やどるという八百万やおよろずの神というかんがかたは、現代げんだい脈々みゃくみゃくがれているのだとかんじます。

 日本人は、物やべ物にたいして接頭辞せっとうじの「お」や接尾辞せつびじの「さん」をけ、丁寧ていねい表現ひょうげんする独特どくとく習慣しゅうかんがあります。これは、よくよく考えてみると無意識むいしきのうちに物に神様かみさまが宿るという考え方の影響えいきょうけて生活せいかつしていることにほかなりません。

 むかしばなしは、ただお話を面白おもしろおかしくたのしむだけではなく、日本人の独自どくじの考え方や信仰しんこうつたえるというおおきな役割やくわりになっているのではないでしょうか。

 昔ばなしからは、長年ながねんにわたり受け継がれた日本人の精神性せいしんせいれることができます。そして、そこには日本人がいままでつちかってきた独自どくじ伝統でんとう文化ぶんかまなぶことができます。

 色々いろいろな昔ばなしにせっすることは、日本にっぽんの伝統や文化にあらためてけるだけではなく、それを伝えていこうとする態度たいどそだてることにつながります。

 『かしき長者』には、昔の日本人がのこしてきた伝統や文化とどうかかわるか、それと同時どうじに現代の日本人がどのようにそれと関わっていくかを考えさせられる物語ものがたりです。

まんが日本昔ばなし

かしき長者ちょうじゃ
放送日: 昭和51年(1976年)04月17日
放送回: 第0049話(第0028回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: まるふしろう
文芸: 沖島勲
美術: 下道一範(サキスタジオ)
作画: 高橋信也
典型: 長者譚ちょうじゃたん
地域: 中部地方(愛知県)

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最後に

 今回こんかいは、『かしき長者ちょうじゃ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 おはなし舞台ぶたいである日間賀島ひまかじまは、観光かんこう宣伝せんでん広告こうこくにもあるとおり「たこ河豚ふぐ」のしまです。そして『かしき長者ちょうじゃ』は、まさしく「タコ(多幸たこ)」と「フグ(ふく)」のおはなしです。ぜひれてみてください!

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