『天福地福』は、持って生まれた福運により富を授かるというお話です。福運に恵まれる者と恵まれるない者の違いがはっきりと描き分けられています。ただし、福運に恵まれということは、その人物の性格や行動ではなく、あくまでも天の運によるものとお話は伝えています。
今回は、『天福地福』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『天福地福』は、中部地方に位置する新潟県や中国地方に位置する山口県に伝わる民話とされますが、東北地方に位置する岩手県にも類話が存在することから、日本海に面した地域に広く分布するようです。
昭和18年(1943年)に三省堂より出版された岩倉市郎の『南蒲原郡昔話集』、それから昭和44年(1969年)に未來社より出版された松岡利夫の『日本の民話 46 周防・長門の民話 第二集』に収録されたことによって、日本中で広く知られるようになりました。
あらすじ
むかしむかし、あるところに正直なお爺さんがいました。そして隣には欲張りなお爺さんが住んでいた。
新年になり、
「天から福を授かるとても吉い夢を見た」
と正直なお爺さんは、隣の欲張りなお爺さんに話しました。
すると、隣の欲張りなお爺さんは悔しくて、
「地から福を授かる夢を見た」
と正直なお爺さんに嘘を言いました。
ある日、正直なお爺さんが畑仕事をしていると、お爺さんの鍬の先が何かに当たる音がしました。掘り出してみると、なんと小判がいっぱい詰まった甕が出てきました。
正直なお爺さんは、
「これは隣のお爺さんの言った“地から福”に違いない、だからこれは隣のお爺さんのものだ」
と言って、小判の入った甕を隣の欲張りなお爺さんに渡しました。
しかし、隣の欲張りなお爺さんが甕を開けると小判どころか、出てきたのはヘビの大群でした。
騙されたと思い、腹を立てた隣の欲張りなお爺さんは、正直なお爺さんの家の屋根に上がって、甕から出てきたヘビを天窓から放り投げました。
するとヘビは小判に戻りました。
正直なお爺さんは、突然降ってきた小判に、これこそ夢で見た“天から福”と喜び、たいそうなお金持ちになり、いつまでも安楽に暮らしたそうです。
解説
新しい年を迎え初めて見る夢には、その年がどのような年になるのかを夢を通じて神様が教えてくれるものといわれ、古くから「初夢」と呼ばれています。
初夢が初めて文献に登場するのは、西行法師の歌集『山家集』なので、平安時代末期にはその概念が既に存在していたようです。
感想
現代社会では、正直だけで世の中を渡っていくことは非常に困難です。
時には「正直者が馬鹿を見る」こともあるし、むしろそういった場合の方が多いかもしれません。
しかし、それでも「正直に生きる」ことの大切さ、ひたむきさは忘れてはならないのです。
それは実を言うと、「吉いこと」は正直者に起こるからです。
正直に生きることによって精神的な緊張から解放され、感情が安定し、周囲の人たちといい関係を保つことができるようになります。
つまり、『天福地福』は、自分本位に身勝手で嘘をついて上手く立ち回って生きるより、正直に生きる方があなたを強く聡明にするということを説いているのです。
まんが日本昔ばなし
『天福地福』
放送日: 昭和50年(1975年)02月25日
放送回: 第0016話(第0008回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・常田富士男
出典: 表記なし
演出: 瀬古常時
脚本: 鈴木良武
美術: サキスタジオ
作画: 福原悠一
典型: 隣の爺型・致富譚
地域: 中部地方(新潟県)/中国地方(山口県)/東北地方(岩手県)
『天福地福』は未DVD化のため「VHS-BOX第5集 第50巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『天福地福』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
共存共栄という言葉がありますが、古来より日本人は「他人の不幸の上に自分の幸せを築かない」を美徳としてきました。「自分さえ良ければいい」とった一人だけの繁栄はあり得ません。自他共に生きようと望むところに、共存共栄の華が開きます。『天福地福』は、それを子どもにも分かりやすく説明したお話です。ぜひ触れてみてください!