昔話『大沼池の黒竜』のあらすじ・解説・感想|おすすめ絵本
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 『大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう』は、「黒姫伝説くろひめでんせつ」としてられている、黒龍こくりゅう黒姫くろひめ神秘的しんぴてきでいて、とても舞台ぶたいである長野県ながのけん密着みっちゃくした、長野県民ながのけんみんあいされてきた民話みんわです。

 今回こんかいは、『大沼池の黒竜』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう』は、中部地方ちゅうぶちほう位置いちする長野県ながのけん北信地方ほくしんちほうつたわる民話みんわである「黒姫伝説くろひめでんせつ」がもとになっています。

 長野県ながのけん北部ほくぶ上水内郡信濃町かみみのちぐんしなのまちにある黒姫山くろひめやま。その名前なまえ由来ゆらいとなった黒姫くろひめかんする伝説でんせつ物語ものがたりです。

 また、大沼池おおぬまいけのほとりには、「黒姫伝説」に登場とうじょうする黒龍こくりゅうまつ大蛇神社だいじゃじんじゃ鎮座ちんざしています。

 信濃国しなののくに(現在げんざい長野県ながのけん)の山々やまやまおおくの伝説でんせつめています。信濃富士しなのふじともばれる黒姫山くろひめやまも『黒姫くろひめものがたり』とばれる伝説があります。まだ自然しぜん人間にんげんが、それほどへだてのなかったとおむかし、この土地とちりゅう若者わかものと人間のひめにまつわる物語ものがたりを、いぶき彰吾しょうごさんのやさしいぶん北原志乃きたはらしのさんの神秘的しんぴてきにより、あいたたかいの民話みんわがほおずき書籍しょせきより絵本えほんとなってよみがえります。

 東西とうざいむす位置いちし、日本にっぽん屋根やねといわれる信州しんしゅう自然しぜんのなかで伝承でんしょうされてきた民話みんわんだ『日本にっぽん民話みんわ1 信濃しなの民話にんわ』は、自然しぜん人間にんげんたたかいがんだ祖先そせん英知えいち願望がんぼう結晶けっしょうです。

 角川書店かどかわしょてんより出版しゅっぱんされた『日本にっぽん民話みんわ 2 (自然しぜん精霊せいれい)』は、瀬川拓男せがわたくおさん・松谷まつたにみよさん・辺見へんみじゅんさんが編者へんしゃとなり、日本にっぽんむかしばなしから“自然しぜん精霊せいれい” を主題しゅだいとした伝説でんせつが63ぺん収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、信濃国しなののくに北部ほくぶ中野鴨ヶ嶽なかのかもがたけ小館城こたてじょうというしろがあり、城主じょうしゅ高梨摂津守政盛たかなしせっつのかみまさもりには黒姫くろひめというとてもうつくしい姫君ひめぎみがおりました。

 あるはるのこと、政盛まさもりは黒姫ととも家臣かしんれて花見はなみかけました。政盛が黒姫のしゃくさかずきかたむけていると、どこからか一匹いっぴきちいさな白蛇しろへび姿すがたあらわしました。

 政盛から、
 「黒姫、白蛇も盃がしいようだ。酌をしてやるがよい」
れた様子ようすうながされたので、黒姫はおそれることもなく白蛇のまえに杯をしました。

 白蛇は、盃のさけすと、しばらく黒姫のかおをじっとつめたあと、そのから姿をしました。

 その、黒姫のもとに狩衣かりぎぬ小姓こしょうが現れ、
 「わたし昼間ひるま姫君ひめぎみから盃をいただいたものです。どうか、あなたさまつまむかえたい」
いました。

 小姓の言葉ことばに黒姫は戸惑とまどいながらも、その気高きだかく美しい姿に、ひめこころかれました。

 「そのようなことは、ちちのところへおはなしください」
と黒姫がこたえると、
 「では、後日ごじつあらためてうかがいます」
と小姓は言いのこし、そして自分じぶんがここにあかしとしてかがみいて姿を消しました。

 数日後すうじつご、小姓は政盛のもとをたずね、黒姫をよめにもらいたいともうれました。

 小姓の物腰ものごしやわらかくどころがありませんでした。

 政盛からても立派りっぱ青年せいねんだったので、小姓に政盛が身元みもとをたずねると、
 「私は志賀山しがやま大沼池おおぬまいけぬし黒龍こくりゅうです。花見のうたげで姫君に盃をいただいてから、姫君のことがどうしてもわすれられないのです」
 さらに小姓はつづけて、
 「姫君をさらってくことはたやすいことですが、それは道理どうりはんするので、こうして伺いました。黒姫をぜひ妻としておむかえしたい」
とおねがいしました。

 おどろいた政盛は、
 「人間にんげんではないものに黒姫をとつがせるわけにはいかない」
ことわり小姓をかえしました。

 それから毎日まいにちのように小姓は城を訪ねて政盛におなじ願いをり返しました。

 しかし、政盛も大事だいじな黒姫をりゅう化身けしんに嫁がせるわけにはいかず、小姓の申しを断り続けました。

 小姓が訪れるようになってから百日ひゃくにち、政盛は一計いっけいあんじ、
 「私がうまり城のまわりを二十一にじゅういしゅうするので、そのあとおくれずについてくることができれば黒姫をやろう」
と小姓に試練しれんすことにしました。

 翌日よくじつ、政盛が馬に乗り城の周りをはしはじめると小姓はみずからのあしで城の周りを走りました。しかし、さすがにひとの姿ではいつくことができず、ついに黒龍の姿にもどって政盛の後を追いかけました。

 すると、各所かくしょ逆植さかうえにかたなそなえられており、う黒龍はこの刀によって見るも無惨むざんかれました。

 これは政盛の計略けいりゃくでした。

 それでも黒龍はひるむことなく、ものくるいで約束やくそくの二十一周を走りえました。

 そこで、
 「約束どおり黒姫を」
と願う黒龍にたいし、政盛はせせらわらって、
 「龍の化身が姫を嫁にするなど、ほどれ」
と言って、手下てしたの者たちにからせました。

 この仕打しうちに黒龍は激怒けきどし、
 「やま四十八よんじゅうはちいけみずとそう」
さけび、きずついたからだ鴨ヶ嶽かもがたけ頂上ちょうじょうへとのぼっていきました。

 その途端とたんあた一面いちめんにははげしいあらしおとずれました。

 容赦ようしゃなく大雨おおあめは続き、ついには洪水こうずいとなってむらおそいました。

 なん因果いんがもない村人むらびとたちがみずまれる様子ようすを見て黒姫は、
 「黒龍は約束をまもったではありませんか。これでは黒龍がかわいそうです」
と小姓にひどい仕打ちをした政盛をめました。

 そして、黒龍にかって嵐をしずめるよう叫び、いつかのに黒龍がいていった鏡をたかげ黒龍のこころを鎮めようとしました。

 すると黒龍が姿を現し、黒姫をに乗せるとてんけ上がりました。

 黒姫は洪水でてた村を見て、
 「約束をやぶったのは父ですが、なぜつみもないたみを」
と黒龍を責めました。

 黒姫のやさしい心にれた黒龍は、荒れくるう自分の心を鎮め、
 「おゆるしください。人間に裏切うらぎられたときわれわすれていかりに身をまかせました」
なみだながしながら黒姫に許しをいました。

 こうして黒龍は大沼池をて、鏡にみちびかれるままにあたらしいやまいけへとうつみ、黒姫と一緒いっしょらすことになりました。

 これより、その山は黒姫山くろひめやまばれるようになり、山の池にはいまでも黒龍と黒姫がしあわせに暮らしているといいます。

解説

 『大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう』は、「黒姫伝説くろひめでんせつ」として日本中にっぽんじゅうひろられています。

 この物語ものがたりほかにも、龍蛇りゅうじゃ化身けしんむすばれることにくるしむ黒姫くろひめ自害じがいする「大蛇だいじゃになった黒姫くろひめ」や、水害すいがいに苦しむたみすくうために黒姫が龍蛇を退治たいじする「黒姫物語くろひめものがたり」、さらには黒姫くろひめ自身じしんが龍蛇になってしまう「黒姫様くろひめさまなないけ」など、さまざまな内容ないようの物語がつたわりますが、すべてに共通きょうつうして、地元じもと領主りょうしゅむすめが黒姫で、そのひめこいをした龍蛇との悲恋ひれんかんしての物語となっています。

 それは、それだけ人々ひとびとが、この黒姫山くろひめやまおもいをせてきたということのあらわれではないでしょうか。脈々みゃくみゃくつづいてきた黒姫山とともにあるさとらしがあったからでしょう。

 つまり、数多かずおおくの伝説でんせつまれたのは、ひとやまとの密接みっせつ関係かんけいがあったからということです。

 それから、原作げんさく脚本きゃくほん監督かんとく宮崎駿みやざきはやお平成へいせい13ねん(2001年)に劇場げきじょう公開こうかいされたスタジオジブリの長編ちょうへんアニメーション映画えいがせん千尋ちひろ神隠かみかく』には続編ぞくへん存在そんざいするとのうわさがあって、それは『みずかえみち』という題名だいめいなのですが、じつはそのおはなしは「黒姫伝説」がもとになっているとわれています。

 『せん千尋ちひろ神隠かみかく』には「琥珀川こはくがわぬし神様かみさま」でハクとばれるしろりゅう登場とうじょうします。

感想

 この黒姫くろひめ黒龍こくりゅう題材だいざいとした『大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう』ほど、人々ひとびときつけ、その時代じだいいろどりをび、現在げんざいつづける民話みんわ存在そんざいしないとおもいます。

 「黒姫伝説くろひめでんせつ」として日本中にっぽんじゅうひろられる物語ものがたりは、黒龍と表現ひょうげんされた自然災害しぜんさいがい人々ひとびとたたかいというたしかな現実げんじつが、黒姫という悲劇ひげき主人公しゅじんこうることで、悲恋ひれん物語ものがたりとしての魅力みりょくもあわせつ民話です。

 黒姫山は木々きぎふかみどりつつまれたやまです。日本海にほんかいからの海風うみかぜけて、すぐにきりに包まれる神秘的しんぴてきやまです。山をかくながれるくもていると、不思議ふしぎりゅう連想れんそうします。

 この自然しぜんと人々の物語へのねがいがなくならないかぎり、『大沼池の黒竜』は、永遠えいえんかたがれ、き続けることでしょう。

まんが日本昔ばなし

大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう
放送日: 昭和51年(1976年)05月22日
放送回: 第0057話(第0033回放送 Aパート)
語り: 常田富士男・(市原悦子)
出典: 表記なし
演出: 水沢わたる
文芸: 沖島勲
美術: 山守正一
作画: スタジオアロー
典型: 黒姫伝説くろひめでんせつ異類婚姻譚いるいこんいんたん龍蛇譚りゅうじゃたん蛇聟入譚へびむこいりたん
地域: 中部地方(長野県)


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最後に

 今回こんかいは、『大沼池おおぬまいけ黒竜こくりゅう』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 「黒姫伝説くろひめでんせつ」としてもられる『大沼池の黒竜』の主人公しゅじんこう黒龍こくりゅう黒姫くろひめは、いま黒姫山くろひめやまあそび、らします。そんな伝説でんせつの黒姫山を、これからもさと人々ひとびと見上みあげてらしていくことでしょう。ぜひれてみてください!

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