昔話『あずきとぎ』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『あずきとぎ』は、ショキショキとおとをたて「小豆あずきあらおか、ひとっておか」とうたいながらかわのほとりで小豆あずきあらうといわれる日本にっぽん妖怪ようかいです。

 今回こんかいは、『あずきとぎ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『あずきとぎ』は『小豆あずきとぎ』または『小豆あずきあらい』ともばれ、日本にっぽんでは知名度ちめいどがとてもたか妖怪ようかいです。

 日本にっぽん全国ぜんこくられる妖怪だけあって、出没しゅつぼつ地域ちいき全国ぜんこく各地かくちつたえがあります。

 『あずきとぎ』の妖怪の由来ゆらいとされる、天保てんぽう12ねん(1841年)に刊行かんこうされた桃山人とうさんじん奇談集きだんしゅう絵本百物語えほんひゃくものがたり』にある「あずきあらい」によれば、越後国えちごのくに高田たかだ(現在げんざい新潟県上越市にいがたけんじょうえつし)の山寺やまでらにいた小僧こぞういのちうばわれ、それがけてたと紹介しょうかいされています。

 また、『あずきとぎ』の正体しょうたいを、イタチやキツネ、タヌキ、ムジナなどの小動物しょうどうぶつとする地方ちほうもあります。

 絵本えほんあずきとぎ (京極夏彦きょうごくなつひこ妖怪ようかいえほん 3)』は岩崎書店いわさきしょてんから出版しゅっぱんされています。京極夏彦きょうごくなつひこさんからされるおそろしくもうつくしい言葉ことばと、町田尚子まちだなおこさんのいきをのむほど神秘的しんぴてきあやしいは、恐怖きょうふというよりも好奇心こうきしん世界せかいへといざないます。京極夏彦さんと町田尚子さんがとどける史上しじょう最高さいこう恐怖きょうふ絵本えほんです。

 かつてテレビで一大いちだいブームをつくった『まんが日本にっぽんむかしばなし』が、二見書房ふたみしょぼうより二見ふたみサラ文庫ぶんことして刊行かんこう。『あずきとぎ』のおはなしは『まんが日本昔ばなし だい17かん』のなか収録しゅうろくされています。

 文庫ぶんこ桃山人夜話とうさんじんやわ絵本百物語えほんひゃくものがたり~ (角川かどかわソフィア文庫ぶんこ)』は角川書店かどかわしょてんから出版しゅっぱんされています。江戸時代えどじだい人気にんき妖怪本ようかいぼん絵本百物語えほんひゃくものがたり』は、おおくの妖怪ようかい絵師えしたちに影響えいきょうあたえた、妖怪画ようかいが原点げんてんともいうべき作品さくひんです。本書ほんしょは、妖怪画、翻刻ほんこく現代語訳げんだいごやく三章さんしょうにわけて紹介しょうかいし、とくに現代語訳はみやすく親切しんせつやくされた逸品いっぴんです。妖怪画はオールカラーで1ページに一枚いちまいぜん44まい収録しゅうろくされています。

あらすじ

 むかしむかし、あるところに、それは気味きみわるいおてらがありました。

 そのお寺には、ものるとのうわさがありました。

 あるばんむらわかしゅうが、おじいさんから、お寺の化け物のはなしいていました。
 「あの寺には色々いろいろな化け物がおる。そのなかでも、ひとこわいのが人魂ひとだまふたつ目に怖いのが身投みなげの古井戸ふるいどみっつ目がうらめしやのやなぎよっつ目がうご墓石はかいしいつつ目にてくるのが一本足いっぽんあし傘小僧かさこぞう
と、お爺さんの話ががるほどに、村の若い衆はふるえ上がりました。

 けれども、兵六ひょうろくというおとこだけは、平気へいきかおであまり怖がっていない様子ようすでした。

 そんな兵六の様子に、
 「これだけは、おまえでも怖いはずじゃ。小豆あずきとぎのおけじゃ」
とお爺さんは、また化け物の話をはじめました。

 「小豆とぎは、寺の本堂ほんどうみつくお化けで、だれひとり正体しょうたいたものはおらん」
 さらにつづけて、
 「『ショーキ、ショキショキ、小豆とぎましょうか。それとも人間にんげんっていましょうか。ショーキ、ショキショキ』とこえだけがするそうじゃ。これが一番いちばん怖いお化けじゃ」
とお爺さんはいました。

 ところが、兵六ときたら、
 「おら、なんともね」
と言うので、それならば肝試きもだめしをしようということになりました。

 村の若い衆は、くらいお寺の山門さんもんから、さらに暗く不気味ぶきみな墓場に兵六をれていきました。

 墓場にくと、提灯ちょうちんのお化けが早速さっそくケタケタとわらしました。
 「たー!」
と言って村の若い衆の何人なんにんかはげ出しました。

 でも兵六は、
 「おら、なんともね」
と言いました。

 古井戸ではガイコツがび出し、柳の木の下では幽霊ゆうれいかおを出し、傘小僧かさこぞうおどかされても、兵六は平気でした。

 村の若い衆はとっくに逃げ出し、もうだれもいませんでした。

 一人ひとりになった兵六は、本堂ほんどうなかすわみました。

 「こんばんは。小豆さん、ちょっくらかおせてくだせえ」
と兵六が言うと、稲光いなびかり突然とつぜんこり、なんやら不気味な声がこえてきました。

 「ショーキ、ショキショキ、小豆とぎましょうか。それとも人間を取って食いましょうか。ショーキ、ショキショキ」

 兵六は、小豆とぎの声にあわせて、
 「ショーキ、ショキショキ、小豆さん、ほかに言うことはないのかね」
と言いました。

 いくら小豆とぎが怖がらせようとしても、兵六はちっともこたえませんでした。

 小豆とぎは、とうとうこまてて、
 「これでもくらえ!」
と言うと、天井てんじょうから、それはそれはおおきな“ぼたもち”がちてきました。

 そのぼた餅のあまいこと美味おいしいこと。

 それからというもの、兵六は、なお寺に出かけては、小豆とぎのぼた餅をごちそうになるようになりました。

 ある、ぼた餅のはなしを村の若い衆にはなしたところ、本当ほんとうの話かどうかをたしかめることになり、村の若い衆も一緒いっしょに本堂へくことになりました。

 「こんばんは。今夜こんやは村の衆も連れてきたので、でっかいぼた餅をおねがいします」
と兵六が小豆とぎにお願いしましたが、その日にかぎって小さなぼた餅すらちてきませんでした。

 「おら、うそつきになってしまう」
怒鳴どなる兵六のまえに、天井から巨大きょだいなナスが落ちてきました。

 「毎度まいど毎度まいど、ぼた餅はないわ。たまにはナスの漬物つけものでおちゃでもんでろ。これが本当の“おもてナス”じゃ」
と小豆とぎは下手へたなダジャレを言うと、それからは二度にどあらわれることはなくなったそうです。

解説

 『あずきとぎ』は、水木みずきしげるの妖怪ようかい漫画まんがゲゲゲの鬼太郎きたろう』にも登場とうじょうしたことがある、日本にっぽんでは知名度ちめいどがとてもたか妖怪ようかいです。

 そこで、日本にっぽん各地かくち伝承でんしょう簡単かんたんにご紹介しょうかいします。

 江戸時代えどじだい後期こうき刊行かんこうされた白河藩士しらかわはんし広瀬典ひろせてんの『白河風土記しらかわふどき巻四かんよんに『あずきとぎ』のことがしるされています。
 そこには、鶴生つりう(現在げんざい福島県西白河郡西郷村ふくしまけんにししらかわぐんさいごうむら)の奥地おくち高助たかすけというところ山中さんちゅうでは、炭窯すみがま宿泊しゅくはくするものときとして鬼魅きみかいくことがあり、その怪を「小豆磨あずきとぎ」とぶとあります。
 さらに、夜中よなかにサクサクと小豆あずきおとがするので、炭焼すみや小屋ごやちかづいてみてもそこにはだれもいないともあります。

 茨城県いばらきけん新潟県にいがたけん佐渡島さどがしまでは『あずきとぎ』は「小豆洗あずきあらい」とばれ、ひくおおきい法師姿ほうしすがたで、わらいながら小豆あずきあらっているとつたわります。
 「小豆洗い」は縁起えんぎい妖怪といわれ、むすめ女性じょせいが小豆をって谷川たにがわかけてこれをにすると、娘ははやえんづくといわれています。

 大分県おおいたけんでは『あずきとぎ』は、かわのほとりで「小豆あずきあらおか、ひと っておか」とうたいながら小豆をあらうと伝わります。
 そのおとうたをとられてしまうと、らないうちに川べりに誘導ゆうどうされとされてしまうともいわれています。
 そして、音と歌がこえるだけで、姿すがたものはいないともいわれています。

 長野県松本市ながのけんまつもとしでは『あずきとぎ』は、たおす音やあかぼうごえをたてると伝わります。

 群馬県邑楽郡邑楽町ぐんまけんおうらぐんおうらまち島根県しまねけんでは『あずきとぎ』は、ひとをさらう者といわれています。

 漫画まんがゲゲゲの鬼太郎きたろう だい1かん』は講談社こうだんしゃから出版しゅっぱんされています。昭和しょうわ40ねん(1965年)『週刊しゅうかん少年しょうねんマガジン』で「墓場はかば鬼太郎きたろう」として連載れんさい開始かいしした、水木みずきしげるさんの代表作だいひょうさく新書しんしょサイズでよみがえりました。だい1かんには、おどろくべき鬼太郎きたろう出生しゅっせい秘密ひみつかされた、「鬼太郎きたろう誕生たんじょう」など、ぜん7収録しゅうろくされています。

感想

 『あずきとぎ』とばれるだけあって、伝承でんしょうおおくは小豆あずきあらうのに必要ひつようとなるかわ井戸いどなどのみず関係かんけいしています。

 それは、水のあるところをあまくみたり、かるかんがえたりしてはいけないとう警告けいこくと、水難すいなん事故じこ未然みぜんふせぐために、はかれない水のおそろしさをつたえているようにかんじます。

 過去かこ被災ひさい経験けいけん民話みんわなどとして後世こうせいのこしたものを「災害さいがい伝承でんしょう」と呼び、地域ちいき家庭かていつたえられてきました。

 しかし、災害伝承や妖怪ようかいつたえは“科学的かがくてき根拠こんきょ証明しょうめいできない”という理由りゆうから、なが地域ちいきなかもれてきました。

 昔話むかしばなしや妖怪のおはなし面白おもしろがるだけではなく、なぜその土地とちにそのお話が伝わっているのか、その背景はいけいかんがえることは、とてもたのしいことです。

 そして、本当ほんとう自然災害しぜんさいがい事故じこ事件じけんなどとむすびつく、昔話や妖怪のお話がつかるかもしれません。

 昔話や妖怪のお話は時代じだいえ、いまも地域の自然災害や事故、事件などをかたつづけているかもしれませんよ。

まんが日本昔ばなし

あずきとぎ
放送日: 昭和51年(1976年)07月31日
放送回: 第0071話(第0043回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 小華和ためお
文芸: 境のぶひろ
美術: 半藤克美(スタジオユニ)
作画: 土田プロ
典型: 怪異譚かいいたん
地域: 中部地方


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 『あずきとぎ』は「DVD-BOXだい3しゅう 第11かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『あずきとぎ』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 かわ井戸いどなどから「シャキシャキ」と小豆あずきあら不気味ぶきみおとこえてきたら、それは『あずきとぎ』の仕業しわざかもしれませんよ。ぜひれてみてください!

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