『かもとりごんべえ』は、怠け者で、いつも一度にどっさり獲物を手に入れる方法はないかと考えている男の冒険物語です。
今回は、『かもとりごんべえ』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『かもとりごんべえ』は、九州地方に位置する熊本県に伝わる民話です。
主人公の権兵衛が、百羽の鴨にぶら下がって空を飛んだり、巨大な粟を収穫しようとしてふっ飛ばされたり、傘を持っていると突風が吹き空を飛んだりするなど、とにかくあり得ないことを、面白おかしく描いた笑い話が『かもとりごんべえ』です。
類話は日本各地に伝わりますが、その中でも特に人気があるものが、権兵衛の落ちた場所が五重塔のてっぺんで、そこから飛び降りた際、地上にいたお坊さんの頭にぶつかり、お坊さんの目から飛び出た火花で五重塔が燃えてしまうという凄い内容のお話です。
絵本 『かもとりごんべえ (復刊・日本の名作絵本 6)』は岩崎書店から出版されています。堀尾青史さんの文には日本の農民の楽天性がよく表れていて、読んでいて楽しくなります。また、絵は福田庄助さんがサラシ布に描いたことで、独特の雰囲気のあるものに仕上がっています。 ポプラ社より出版されている絵本『かもとりごんべえ (むかしむかし絵本 19)』は、一人称で人生論が盛り込まれた語りによって、どこか哀愁が漂いますが、結局は大笑いをするという、とても面白いホラ吹き話です。 文庫『かもとりごんべえ (ゆかいな昔話50選)』は岩波書店から出版されています。語りつがれた日本各地に伝わる昔話の中から、表題作の「かもとりごんべえ」のほか、笑いを誘うおかしな話を選んで50篇が収載されています。あらすじ
むかしむかし、あるところに、鴨をとって暮らしている権兵衛という猟師がいました。
ある年の冬の夜、権兵衛は裏山の池に行ってみたら、仕掛けておいた罠に、数え切れないほどの鴨がかかっていました。おまけに池には氷が張っているので、鴨たちは動けずにいました。
権兵衛は大喜びで、凍り付いた鴨一羽一羽の罠の縄を集め始めました。そうして九十九羽の鴨の縄を集めましたが、朝となり太陽が昇ると、凍っていた鴨が目を覚まし、バタバタバタと一斉に空へと飛び立ちました。それと一緒に、権兵衛も鴨たちに引っ張られて空へ舞い上がりました。
権兵衛は必死に縄につかまっていたが、やがて力尽きて縄から手を放し真っ逆さまに落ちてしまいました。落ちた所は粟畑の真ん中でした。そこでは、ちょうどお百姓さんが粟の刈り入れをしているところだったので、権兵衛はしばらくそこで働くことにしました。
そんなある日、粟畑で刈り入れをしていると、三本だけ特別に大きな穂をつけた粟がありました。大きな穂をつけた粟の茎に鎌を入れたところ、茎が勢いよく跳ねて、権兵衛は吹っ飛ばされてしまいました。
畑を越え、山を越え、落ちた所は、見知らぬ町の傘屋の軒先でした。その傘屋で権兵衛はしばらくで働くことにしました。
ある日、傘を庭に干していると、突風が吹き権兵衛は傘ごと飛ばされてしまいました。権兵衛は傘につかまって飛んでいると、とても大きな風が吹き、その勢いで傘が裏返しになってしまい、権兵衛は池の中に落っこちました。
そこは権兵衛が住む家の裏山にある池でした。池から出てきた権兵衛の股引の中には、ドジョウが百匹入っていました。権兵衛は大喜びでした。
解説
『かもとりごんべえ』は、笑いを目的とした単純な散文形態の昔ばなしと捉えられ、「欲張ってはいけない」とする教訓が広く受け入れられています。
しかし、『かもとりごんべえ』は、そのような教訓よりも、何かもっと別の意味を後世に伝えたいという普遍性を有した昔ばなしではないかと感じて仕方ありません。
そもそも「欲張る」というのは、自分の身の丈に合わないものや他人のものまで欲しがることです。でも、『かもとりごんべえ』には、そのような事象は描かれていません。
『かもとりごんべえ』は“欲”を題材にしていますが、それは「欲張る」ではなく、「欲深さ」を描いたお話ではないでしょうか。
つまり、「転んでも、ただでは起きない」という、転んだことで何かをつかみ、そして目覚めて欲しいと願う、良い意味としての“欲”を描いたお話ということです。
感想
誰もが、なるべく失敗せずに、着実にうまくいく人生を歩みたいと思っていることでしょう。でも、実際には、計画通りに物事が運ぶとは限りません。むしろ、その通りにならないことの方が多いのではないでしょうか。
アタマで考える行為は、いくらでも、いつまでもできます。しかし、考えれば考えるほど、考えていた計画からは遠ざかっていくように感る方も多いのではないでしょうか。
それは、たぶん考えてもキリがないからです。キリのないものを際限なく追いかけてもメドが立たないので、その内に迷子になってしまい、かえってコジらせてしまうからです。
それならば、アタマで考えるのを一旦やめて、一歩、踏み出してみてはいかがでしょうか。なぜならば、人間は考えたようにはならず、動いたようになるからです。
考えて行動し、行動した結果を振り返り、また行動する。そうすれば現実が分かります。嬉しかったり、悲しかったり、楽しかったり、悔しかったり、とにかく視界が開けるので、次につながる“ひらめき”がきっと見つかるはずです。
人生の目的は行動することであり、知識や思想ではありません。行動しなければ、どう転ぶかも分かりません。
人生には何ひとつ無駄なものはありません。つまり、人生はどう転んでも同じだということです。それならば、積極的に行動を起こして、人生を思いっ切り楽しもうじゃありませんか!
「人生はどう転んでも楽しくて仕方がないもの」ということを、『かもとりごんべえ』は私たちに伝えたいのではないでしょうか。
まんが日本昔ばなし
『かもとりごんべえ』
放送日: 昭和51年(1976年)04月17日
放送回: 第0050話(第0028回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 小華和ためお
文芸: 沖島勲
美術: 宮野隆
作画: 金沢比呂司
典型: 笑話
地域: 九州地方(熊本県)
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『かもとりごんべえ』は「DVD-BOX第3集 第13巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『かもとりごんべえ』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
現代のように気軽に旅行ができなかった昔の人たちにとって、空を飛んでは知らない土地に降り立つ、『かもとりごんべえ』の主人公である権兵衛さんは、憧れの人物像だったことでしょう。ぜひ触れてみてください!