親切 にしてもらったお礼として、狐からお爺さんがもらった頭巾は、動物の言葉がわかる不思議な頭巾でした。その頭巾の力によってお爺さんが富を得るというお話が『ききみみ頭巾』です。
今回は、『ききみみ頭巾』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
日本各地で語り継がれてきた口承説話のため、『ききみみ頭巾』の明確な原典とされる文献資料はありません
しかし、江戸時代前期の僧侶である浅井了意が寛文2年(1662年)に著した『安倍晴明物語』の中に、「晴明がカラスの声を聞いて時の帝の病を治す」という逸話が記されています。
日本各地に類話が存在し、その中には「お爺さんが神様から頭巾をもらう」というお話もあります。
また、同じような、聞こえないものが聞こえるようになる不思議なお話は、世界中に存在します。
絵本『ききみみずきん (むかしむかし絵本 9)』はポプラ社から出版されています。若菜珪さんによる分かりやすい絵と、岩崎京子さんによる独特のリズムの文が大変に素晴らしく、読み聞かせにおススメの一冊です。あらすじ
むかしむかし、あるところに心の優しいひとりのお爺さんがおりました。
お爺さんが芝刈りから帰る途中、子狐が木の実を取ろうとしていたので、お爺さんが代わりに取ってあげるととても喜んでいました。
ある日、お爺さんが街まで出かけて遅くに帰ると、先日の子狐が手招きしていました。
子狐についていくと、母狐と暮らす家に案内されました。
母狐は木の実を取ってくれたお礼にと小汚い頭巾をくれました。
翌日、お爺さんが薪割りをしていると、昨日もらった頭巾が懐から落ちたので、試しにかぶってみることにしました。
すると雀の話しが分かるようになりました。
お爺さんは不思議な頭巾に驚きましたが、それ以来いろいろな動物の話しを聞いて楽しむようになりました。
そんなある日、木の上のカラスの会話を聞いていると、村の長者の娘の病気が楠の祟りによるものだというのです。
そこでお爺さんは長者の家を訪ね、夜になると、蔵の中に泊り、楠が話しているのを聞きました。
お爺さんが聞いた話しによると、楠が祟っているのは、新しい蔵が楠の腰の上に建っているからだということが分かりました。
翌日、そのことを長者に伝え、蔵をどかしてみると、娘はすっかり元気になりました。
喜んだ長者はお爺さんにたくさんの褒美をあげました。
そして、お爺さんは狐の好物である油揚げをたくさん買って帰りました。
解説
昔、人間は自然と一体となって暮らしていました。
鳥や木や動物たちもみんな仲間だったのです。
鳥のさえずりや木々のざわめきが、何か話し合っているように聞こえるのは、昔の人間が住んでいた生活環境から得た実感でしょう。
感想
『ききみみ頭巾』の面白さは、頭巾という登場する道具に込められた夢のような効果は、使用する人物の性格によって変化するということではないでしょうか。
『花咲か爺さん』のお話がそうであるように、同じ道具でも心優しいお爺さんが使えば幸せになり、欲張りな隣のお爺さんが使えば不幸になるということです。
過度な欲望を戒める内容のお話ではありますが、『ききみみ頭巾』には欲張りな隣のお爺さんが登場しないので、思いやりの心があふれる明るい物語となっています。
まんが日本昔ばなし
『ききみみ頭巾』
放送日: 昭和51年(1976年) 01月03日
放送回: 第0026話(第0013回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: まるふしろう
脚本: 沖島勲
美術: 馬郡美保子
作画: 樋口雅一
典型: 動物報恩譚・呪宝譚
地域: 東北地方(岩手県)
『ききみみ頭巾』は「DVD-BOX第5集 第22巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『ききみみ頭巾』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
地球上に生きているのは、人間だけではありません。木も鳥も、小川さえも、みんな生きています。そのことを改めて思い知らされるお話が『ききみみ頭巾』です。ぜひ触れてみてください!