昔話『はなたれ小僧さま』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 『はなたれ小僧こぞうさま』は、水神様すいじんさまからおくられた“はなたれ小僧こぞうさま”を大事だいじそだてたことで、まずしかった老夫婦ろうふうふ村一番むらいちばん大金おおがねちになりました。ところが、小僧こぞうさまを手放てばなした途端とたん、老夫婦はもと貧乏びんぼうらしにもどってしまったというおはなしです。

 今回こんかいは、『はなたれ小僧さま』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 『はなたれ小僧こぞうさま』の舞台ぶたいは、九州きゅうしゅう地方ちほう位置いちする福岡県ふくおかけんみやま山川町やまかわまち真弓まゆみつたわる民話みんわといわれています。

 『はなたれ小僧さま』の民話をもとに、みやま山川町やまかわまち大谷おおや石像せきぞうつくられたことで、ひろられるようになりました。

 ちなみに、おはなし登場とうじょうするかわは「そこなしふち」とばれ、みずがとても綺麗きれいな川で、はなたれ小僧こぞうさまの石像の真後まうしろをながれます。

 また、おじいさんとおばあさんが、はなたれ小僧さまにおねがいをしてててもらった屋敷やしきが、みやま市山川町真弓に“小字こあざ屋敷谷やしきだに”として現在げんざい地名ちめいとしてのこっています。

 絵本えほんはなたれこぞうさま (日本の民話えほん)』は教育画劇きょういくがげきから出版しゅっぱんされています。川村かわむらたかしさんによるテンポのよいたのしい九州弁きゅうしゅうべん言葉ことばと、梶山俊夫かじやまとしおさんによる表情ひょうじょうゆたかなあじのあるによって、教訓きょうくんじみた内容ないようをまったくかんじさせません。そして、不思議ふしぎとほのぼのとした読後感どくごかんあじわうことができます。昔話むかしばなし面白おもしろさがたくさんまった素敵すてきな絵本です。

 絵本えほんはなたれこぞうさま』は童話館出版どうわかんしゅっぱんから出版しゅっぱんされています。川崎大治かわさきだいじさんによる独特どくとくかた口調くちょうぶん太田大八おおただいはちさんのえが大胆だいたんきした日本にほん画風がふうが、意外いがいなほど違和感いわかんなく調和ちょうわして、物語ものがたりにどんどんとまれていきます。おおくの教訓きょうくんいましめをふくむ、日本にっぽん昔話むかしばなしらしい、とても魅力的みりょくてき一冊いっさつです。

 絵本えほんはなたれこぞうさま (てのひらむかしばなし)』は岩波書店いわなみしょてんから出版しゅっぱんされています。長谷川摂子はせがわせつこさんによる、擬音語ぎおんご擬態語ぎたいご上手じょうず使つかった、ひびきのよい方言ほうげん口調くちょうぶん心地ここちよく、それが福知伸夫ふくちのぶおさんの素朴そぼくでありながらも豪快ごうかいさがかんじられる版画はんが調和ちょうわすると、不思議ふしぎ魅力みりょくはなちます。人間にんげんならだれもがつ“ごう”をかりやすくえがいた一冊いっさつです。

あらすじ

 むかしむかし、ある村里むらざと正直者しょうじきもののおじいさんとおばあさんがんでいました。

 二人ふたり大変たいへんはたらもので、お婆さんははたけ仕事しごと、お爺さんはちかくのやまからってきたしばまちってらしていました。そんな働き者の二人でしたが、いつまでってもらしがらくになることはありませんでした。

 ある、お爺さんがいつものように柴をかついで町にやってきて、
 「しばはいらんかの」
さけびながら、一日中いちにちじゅうあるきましたが、どうしたことか、その日にかぎって柴が一束ひとたばれませんでした。
 「なんでかのう」
とお爺さんは、仕方しかたなくつかれたあしをひきずり、あさかついでた柴をそっくりそのまま担いで、かえみちにつきました。

 かえ途中とちゅう、くたびれてたお爺さんは、水神様すいじんさままつられているほこらの近くの川縁かわべりにさしかかったさい、ふとまって、
 「しばれなかったのは、わしの日頃ひごろ信心しんじんりんからだ。よし、水神様すいじんさまにおまいりしてかえるとするか」
とお爺さんは、
 「水神様すいじんさまのこりものですみませんが、ぜひお使つかいください」
って、担いでいた柴をすべてかわながし、水神様においのりしました。
 そして、帰ろうとしたとき
 「じいさま、じいさま、おちください」
とお爺さんはだれかにめられたので、いてみると、そこにはしろころもにまとい、れたようなしっとりしたかみつ、うつくしい女性じょせいっていました。
 「さきほどは、たくさんのしばをくださり、ありがとうございます。しばのおれい水神様すいじんさまが、この小僧様こぞうさまげたいとおっしゃっています。この小僧様こぞうさまは、『はなたれ小僧様こぞうさま』といって、おじいさんのねがごとなんでもかなえてくれる不思議ふしぎ小僧様こぞうさまです。そのわり、この小僧様こぞうさまはエビナマスしかがりませんので、毎日まいにち三度さんど新鮮しんせんなエビをって、エビナマスをつくってげてください」
と言って、その小僧様こぞうさますとスーっと女性じょせいえてしまいました。

 端整たんせいなおかおちの小僧様ですが、なぜかはなしたにはきたな二筋ふたすじ鼻汁はなじるらしていました。

 お爺さんは、
 「水神様すいじんさまのおめぐみなので、大切たいせつにおそだてさせていただきます」
と言って、大事だいじに小僧様をいて帰り、お婆さんに帰りにこった出来事できごとはなしてかせました。
 お婆さんもたいそうよろこび、二人ふたりで小僧様を大事だいじそだてることにしました。

 はなたれ小僧様が、あまりに汚かったので、お爺さんは半信半疑はんしんはんぎで、
 「立派りっぱいえててくれ」
と言ってみました。
 すると、おんぼろだったいえ立派りっぱ屋敷やしきまれわりました。

 それからというもの、はなたれ小僧様にいのると、なんでもねがごとかなえてくれるので、いつしか二人は村一番むらいちばん大金おおがねちになりました。

 ところが、二人はだんだんと小僧様へのごおんわすれ、わがままを言うようになりました。

 毎日まいにち三度さんどのエビナマスをあたえることが面倒めんどうになったのと、鼻汁をるのが気持きもわるいとおもうようになり、二人は相談そうだんして、はなたれ小僧様に帰ってもらうことにしました。

 「はなたれ小僧様こぞうさま、もうなにしいものはないので、もうわけないが、そろそろ水神様すいじんさまのもとへおかえりいただけないだろうか」
とお爺さんは、はなたれ小僧様におねがいしました。

 すると、はなたれ小僧様は、大変たいへんかなしそうな表情ひょうじょうかべ、そして鼻汁をズルズルとすすりながら、そのから姿すがたを消しました。

 そうしたらどうでしょう、村一番の立派な屋敷やくらは消えてしまい、家はおんぼろにもどり、二人とももとのようなまずしい暮らしに戻ってしまいました。

解説

 『竜宮童子りゅうぐうどうじ』ともばれる『はなたれ小僧こぞうさま』は、九州きゅうしゅう地方ちほう中心ちゅうしんに、『浦島太郎うらしまたろう』でお馴染なじみの「龍宮伝説りゅうぐうでんせつ」として、全国ぜんこくみずかかわりのふか地域ちいき伝播でんぱしていったといわれています。

 そのあらわれが、おおくの漁師りょうしいえかまどうえに「恵比須神えびすがみ」をおまつりする風習ふうしゅうです。

 恵比須神えびすがみは、豊漁ほうりょうをもたらす漁業神ぎょぎょうしん航海こうかい守護神しゅごしんとして信仰しんこうされてきました。恵比須神と龍宮伝説りゅうぐうでんせつあいまって、『はなたれ小僧さま』の民話みんわまれたさい、「恵比須神」が「エビナマス」になったとかんがえられます。

 それから、龍宮りゅうぐうからおくられた童子どうじふくをもたらすという説話せつわは、一般的いっぱんてきには『はなたれ小僧さま』としてつたわりますが、それは沿岸部えんがんぶなど水と関わりの深い地域にかぎったことであって、内陸部ないりくぶ山里やまざとでは『火男ひおとこ』としてつたわります。

 現在げんざいでも、沿岸部では「恵比須神」を、内陸部では「竈神かまどがみ(火男)」をお祀りする風習は、その名残なのこりだといわれています。

 『福岡ふくおか民話みんわ だい1しゅう ([新版しんぱん]日本にっぽん民話みんわ 30)』は未來社みらいしゃから出版しゅっぱんされています。福岡県ふくおかけんを、それぞれが微妙びみょう自然しぜん環境かんきょうにある、筑後ちくご地方ちほう筑前ちくぜん西部せいぶ筑前ちくぜん東部とうぶ豊前ぶぜん地方ちほう四地域よんちいきにわけて、各地方かくちほうつたわる人間にんげん内面的ないめんてき特徴とくちょう風土ふうど特徴とくちょう如実にょじつしめされた、「はなたれ小僧こぞうさま」などの民話みんわが64へんとわらべうたが収録しゅうろくされています。

 『日本昔話百選にほんむかしばなしひゃくせん』は、挿絵さしえがほとんどないため、文字もじばかりの一見いっけん面白おもしろくなさそうなほんですが、はじめるとすぐにむかしばなしの世界せかいまれます。方言ほうげん口調くちょうかれた文章ぶんしょうですが、方言ほうげん説明せつめいが書かれているなど、みやすい工夫くふうがされています。

 『つぶむかし (どもにおくむかしばなし 8)』は小澤おざわむかしばなし研究所けんきゅうじょから出版しゅっぱんされています。どもたちにおくむかしばなししゅうです。本来ほんらい昔話むかしばなしつ、単純たんじゅん明快めいかいかたぐちまもりつつ再話さいわされた、「たにし息子むすこ」をはじめとした「龍宮童子りゅうぐうどうじ」など49へん民話みんわ収録しゅうろくされています。

感想

 中国ちゅうごく最古さいこ歴史書れきししょである『書経しょきょう』に、「まんそんまねき、けんえきく」という言葉ことばがあります。
 これは、「自惚うぬぼれや慢心まんしんそんまねくが、謙虚けんきょであるとひと幸福こうふくけることができる」という意味いみです。

 世間せけんでは、おのれ能力のうりょくはなにかけて他人たにん見下みくだすような態度たいどり、ちからづくで他人たにんさえむような態度で、他人をしのける強引ごういん人物じんぶつほう成功せいこうしているとおもわれがちですが、けっしてそんなことはありません。

 それは、そのすべての態度が「まん」にほかならないからです。

 では、成功している人は、どのような態度でのぞむのでしょうか。

 それは「けん」の態度です。

 「謙」の態度とは、こころうち物事ものごとたいする熱意ねつい情熱じょうねつっていながらも、謙虚けんきょひかえめな態度のことです。

 つまり、謙虚さをって、おごらないということです。

 しかし、そのような謙虚な態度でて成功した人でも、たか地位ちいくと、謙虚さをわすれてしまい、傲慢ごうまんになることがあります。せっかく、謙虚に努力どりょくをして高い地位に就いたというのに、らずらずのうちに慢心まんしんすると人生じんせいあやまることさえあります。

 「謙虚けんきょにして、おごらない」という気持きもちを、ふかこころきざみ、きていくことが大切たいせつということです。

まんが日本昔ばなし

はなたれ小僧こぞうさま
放送日: 昭和51年(1976年)10月30日
放送回: 第0092話(第0056回放送 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 樋口雅一
文芸: 沖島勲
美術: 竹内靖明
作画: 高橋信也
典型: 宝物譚ほうもつたん
地域: 九州地方(福岡県)

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 『はなたれ小僧こぞうさま』は「DVD-BOXだい8しゅう 第39かん」でることができます。

最後に

 今回こんかいは、『はなたれ小僧こぞうさま』のあらすじと内容ないよう解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 『はなたれ小僧さま』は、「謙虚けんきょひとだけが幸運こううんめぐまれる」という、人間にんげんの“おごり”をいましめるおはなしであり、「しあわせだから感謝かんしゃするのではなく、感謝かんしゃするからしあわせになれる」ともいています。ぜひれてみてください!

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