昔話『十二支の由来』のあらすじ・内容解説・感想|おすすめ絵本
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 「どうして十二支じゅうにしはあの動物どうぶつなの?」
 「どうして十二支じゅうにし動物どうぶつはあの順番じゅんばんなの?」
 だれもが一度いちど疑問ぎもんおもったことがあるでしょう。
 日本にっぽんでは、あるとし元日がんじつに、かみさまが動物どうぶつたちを競争きょうそうさせ、着順ちゃくじゅんめたそうです。そのおはなしが『十二支じゅうにし由来ゆらい』として、現在げんざいかたがれています。

 今回こんかいは、『十二支の由来』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいします!

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概要

 うしとらたつうまひつじさるとりいぬ十二じゅうに種類しゅるい動物どうぶつによって構成こうせいされているのが「十二支じゅうにし」です。

 紀元前きげんぜん古代こだい中国ちゅうごくで、こよみ時間じかんあらわすために使つかわれはじめたのが「十二支」の起源きげんとされます。

 古代中国では、としかぞえるとき使つかわれていたのが木星もくせい運行うんこうでした。古代中国の天文学てんもんがくでは、木星の位置いちで年をかぞえていました。そして、木星の公転こうてん周期しゅうき十二じゅうにねんであることから、てん十二じゅうに等分とうぶんしました。

 このとき誕生たんじょうしたものが、「十二支」の起源です。

 そして、十二じゅうにけられた天には、十二のがあてはめられました。

 じつは、からまでの十二の字は、古代中国ではかずを表すものです。

 天を十二等分したものを「十二支」とし、それを民衆みんしゅう浸透しんとうさせるため、後漢ごかん時代じだい思想家しそうかである王充おうじゅうが、字がめないひとでもおぼえやすくて馴染なじみやすいように、動物どうぶつ名前なまえ変更へんこうしました。

 つまり、動物の意味いみは、あとから便宜上べんぎじょうつけただけということです。

 こうして、古代中国でまれた「十二支」が、うみわたって日本にっぽんにもつたわり、そして『十二支じゅうにし由来ゆらい』の民話みんわが誕生しました。

 絵本えほん十二支じゅうにしのはじまり (日本にっぽん民話みんわえほん)』は教育画劇きょういくがげきから出版しゅっぱんされています。十二支に関する絵本は数多くありますが、その中でも私が一番気に入っています。岩崎京子いわさききょうこさんの心地良ここちよぶんと、二俣英五郎ふたまたえいごろうさんのあかるい雰囲気ふんいきなのに、どもっぽさをまったくかんじさせない魅力みりょくあふれるにより、十二支じゅうにしのことをなにらないどもがんでもたのしむことができます。楽しみながら、十二支の順番じゅんばんおぼえることができるよう工夫くふうされていて、子どもたちが十二支を知るうえで、かすことのできない素晴すばらしい絵本です。

 絵本えほん十二支じゅうにしのはじまり (行事ぎょうじむかしむかし)』は佼成出版社こうせいしゅっぱんしゃから出版しゅっぱんされています。谷真介たにしんすけさんのぶんは、セリフや行動こうどう動物どうぶつ特徴とくちょうをよくとらえていて、物語ものがたり世界せかいきこまれます。そして、赤坂三好あかさかみよしさんによる動物どうぶつたちをきといた版画はんがは、迫力はくりょくがあり新鮮しんせんです。ているだけでも元気げんきる絵本です。

 絵本えほん十二支じゅうにしのはじまり (てのひらむかしばなし)』は岩波書店いわなみしょてんから出版しゅっぱんされています。山口やまぐちマオさんの版画はんがは、可愛かわいらしいわけではないのに、大胆だいたん構図こうずとカラフルな色使いろづかいにより、不思議ふしぎ魅力みりょくにあふれています。さらに、方言ほうげんれているのに、れがく、無駄むだのない、長谷川摂子はせがわせつこさんによる明晰めいせきぶんが、物語ものがたり魔法まほうをかけています。十二支じゅうにしかたる絵本のなかでも、ユニークな存在そんざい一冊いっさつです。

 絵本えほん十二支じゅうにしのはじまり (おひさまのほん)』は小学館しょうがっかんから出版しゅっぱんされています。十二支じゅうにしかんする絵本にくらべて、やまちかずひろさんのぶん荒井良二あらいりょうじさんのは、どの動物どうぶつ可愛かわいらしく表現ひょうげんされていて、やさしさがちあふれていることが特徴とくちょうです。ユーモアたっぷりの神様かみさまと、あいらしい動物たちが微笑ほほえましくえがかれ、ほっこりした気持きもちちになる絵本です。

 『もっとりたい! 十二支じゅうにしのひみつ』は小学館しょうがっかんから出版しゅっぱんされています。古来こらいより、十二支じゅうにし生活せいかつ一部いちぶとして日本人にっぽんじんしたしまれてきました。そんな十二支じゅうにしちのおはなしはもちろんのこと、十二じゅうに動物どうぶつにまつわる昔話むかしばなし故事こごと・ことわざ、さらに動物どうぶつ特色とくしょく生態せいたいまでも解説かいせつしています。写真しゃしんとイラストがふんだんに使つかわれ、よんコマ漫画まんがやダジャレまであります。親子おやこたのしむことができる一冊いっさつです。

あらすじ

 むかしむかし、大昔のことでした。

 神さまはとても困っていました。神さまが仕事を頼んでも、頼まれた動物たちは、すぐにケンカが始めてしまい、仕事をしませんでした。そして、ケンカになると、体の大きな動物が小さな動物に言うことを聞かせていたのでした。

 ある年の暮れ、動物たちを集めて、
 「一月一日の元日の朝、わしのところへ新年の挨拶に来い。一番早く来たものから十二番まで順番に、一年ずつ、その年の大将にしてやろう」
と神さまは言いました。

 それを聞いて、動物たちは「おいらが一番になる」と大騒ぎで、めいめいが「早くお正月が来ないかな」と待ち遠して仕方がありませんでした。

 動物たちの声で、昼寝をしていた猫が目を覚ましました。「みんな、何で騒いでいるのかな」と思い、
 「何があったの?」
と猫はネズミに尋ねました。
 すると、
 「元日の次の日の一月二日の朝に、神さまのところへ行けば、動物の大将になれるんだって」
とネズミは猫に言いました。
 「一月一日の元日の朝じゃないの」
と猫がネズミに聞き返すと、
 「元旦は家でゆっくり過ごすものだから、一月二日の朝だって」
とネズミは言いました。
 「そうか、二日の朝だな」

 ネズミの様子がいつもと少し違うことが気になりましたが、猫はお礼を言って帰っていきました。

 ズル賢いネズミは、競争相手を少しでも減らそうと考え、猫にウソの日にちを教えました。それを真に受けた猫は、すっかり騙されてしまいました。

 そして、大晦日がやってきました。

 辺りが暗くなり始めた頃、
 「おいらは歩くのが遅いから、一足早く出かけることにしよう」
と牛は言って、支度を始め、まだ外が暗いのに、のそのそ出かけていきました。

 牛小屋の天井で、その様子を見ていたネズミは、こっそり牛の背中に飛び乗りました。

 そうとは知らぬ牛は、神さまのもとへと歩き続け、夜明け前に門の前に着くことができました。

 さて、夜明け前となり、多くの動物たちが出かける準備を始めていました。

 そこへ朝日が姿を現し、一月一日の元日の朝がやってきました。

 そして、いよいよ神さまが門を開けました。

 その門を牛がくぐろうとすると、牛の背中に乗っていたネズミがピョンっと飛び降りて、
 「神さま、あけましておめでとうございます」
と挨拶をしました。

 神さまはニッコリ笑い、ネズミに一番の札を渡しました。

 牛は二番目になってしまいましたが、
 「ボーっとしていた自分が悪い。二番で大満足」
と言いました。

 神さまのお話の場に来ていなかった虎は、噂を聞きつけ、
 「本当かどうかは分からないけど、ムダになってもいいから、みなに頼りにされている自分が、動物の大将から外れるわけにはいかない」
と思い、千里の道を駆け抜ける速さで進み、三番目に門をくぐりました。

 そのころ、鳥は迷っていました。いつものように、朝がきたことを知らせる鳴き声を上げるかどうかで迷っていました。

 さんざん迷ったあげくに、
 「神さまからいただいた大切な仕事をやらないわけにはいかない」
と思い、いつもより大きな声で朝がきたことを告げ、急いで出発しました。

 鳥の鳴き声を聞き、大将になりたい動物たちは、支度を整えると、急いで出発しました。

 四番目は、他の動物が休憩をしている間も、ピョンピョンと跳ねながら進んだ兎でした。

 龍と蛇は、一緒に門の前に到着しました。しかし、蛇は、空を飛べるほど修行を積んできた龍を尊敬したいたので、龍に五番目を譲りました。

 龍は優雅に空から五番目で門をくぐり、蛇はニョロニョロと体をくねらせながら地面を這って六番目で門をくぐりました。

 足が速いのに、道草ばかりしてしまった馬は、七番目で門をくぐりました。

 途中で道に迷ってしまった羊は、八番目で門をくぐりました。

 その頃、仲良く一緒に走っていた犬と猿ですが、お互いの負けず嫌いな性格に火がつき、ついに途中で取っ組み合いのケンカを始めてしまいました。

 そこを通りかかったのが鳥でした。

 「ケンカなんかしている場合じゃないぞ」
と鳥は怒りながら、犬と猿のケンカの仲裁に入りました。

 それでも犬と猿はいがみ合いを続けるので、鳥は考えました。そして、まず猿を先に行かせ、間に自分が入り、その次に犬を行かせました。

 この時から、犬と猿はケンカばかりする「犬猿の仲」となりました。

 そうして、九番目に猿、十番目に鳥、十一番目に犬が門をくぐりました。

 そして、最後の十二番目に門をくぐったのは猪でした。

 実は、猪は、一番に門の近くに到着していました。しかし、真っ直ぐにしか猪は進めないので、神さまのいる場所を通り過ぎてしまいました。そのため引き返す羽目になり、結果的に十二番となりました。

 猪の突進に割を食ったのが、門のすぐ近くにいたカエルとイタチでした。

 カエルは、がっかりしながら、
 「もうカエル」
と言って帰っていきました。

 イタチは早くに到着していましたが、「十二番目に門をくぐればいいや」と思い、後から来た動物に順位を譲っていました。

 いよいよ十二番目となったので、イタチが門をくぐろうとしたところを猪に抜かれてしまいました。

 イタチをかわいそうに思った神さまは、
 「月の最初の日をお前さんの日にしてやろう」
とイタチに伝え、毎月最初の日を「つイタチ」と呼ぶことにしました。

 次の日の朝、ネコが門を叩くと、
 「呼んだのは昨日じゃ。今まで寝ておったのか。寝ぼけていないで、顔でも洗ってこい」
とネコは神さまに言われました。

 ネコはがっかりして帰り、それ以来、ネコは、いつも顔を洗うようになり、騙したネズミを見ると天敵として追いかけ回すようになりました。

解説

 十二支じゅうにしはもともと、紀元きげんぜん古代こだい中国ちゅうごくで、こよみなどをあらわすために使つかわれはじめたといわれています。十二支に動物どうぶつてはめた結果けっか、それぞれのには、しあわせをねがうさまざまな意味いみめられました。

 十二支にえらばれた動物に込められたおもいを、ひとつずつていきましょう。

 あらわしているものはねずみです。十二支の一番目いちばんめの動物です。鼠は繁殖力はんしょくりょくたかいことから、子宝こだから象徴しょうちょうとされる動物です。子孫繁栄しそんはんえい意味いみが込められています。

 うしが表しているものはうしです。むかし、牛は食用しょくようというより生活せいかつするうえでの相棒あいぼうでした。おも荷物にもつはこんだりはたけたがやしたりと、生活せいかつかせない動物でした。牛は力強ちからづよさの象徴であり、ねばづよさや誠実せいじつさを表すとされています。

 とらとらのことです。虎は勇猛果敢ゆうもうかかんな動物です。いさましさだけではなく、決断力けつだんりょく才覚さいかくのあるといった意味も込められています。

 が表しているものはうさぎです。兎はおとなしく、おだやかなことから、温和おんわの象徴という意味が込められています。さらに、うさぎ跳躍力ちょうやくりょくから、飛躍ひやく向上こうじょうという意味も込められています。

 たつりゅうを表しています。十二支のなかでは唯一ゆいいつ空想上くうそうじょうものです。古代から中国で龍とえば権力けんりょくの象徴です。日本にっぽんもその影響えいきょうけ、おおきなことをげるという意味が込められています。

 が表すものはへびです。蛇は脱皮だっぴかえして成長せいちょうするため、永遠えいえん生命せいめい再生さいせいの象徴とされています。環境かんきょう変化へんか適応てきおうする能力のうりょく生命力せいめいりょくがあるという意味が込められています。

 うまが表しているものはうまです。馬も牛と同様どうように生活にかせない存在そんざいでした。馬は健康けんこう豊作ほうさくを象徴とされています。また、「左馬ひだりうまたおれない」とされるため、幸福こうふく勝利しょうり成功せいこうなどをるという意味が込められています。

 ひつじが表しているものはひつじです。羊がれで生活をこのむ動物です。その特徴から、家内安全かないあんぜんという意味が込められています。

 さるが表しているものはさるです。神様かみさま使つかいの猿は、「神猿しんえん」といわれ、賢者けんじゃを象徴する動物としてうやまわれていました。知能ちのう学習がくしゅう能力のうりょくたかいという意味が込められています。

 とり表しているのはとりとくにニワトリを表しています。鶏は「ふくむ」につながることから、酉のをあてた「とりいち」というおまつりが各地かくちおこなわれています。そこから商売しょうばい繁盛はんじょうという意味が込められています。

 いぬが表しているのはいぬです。犬はふるくから生活をともにしてきた動物です。主人しゅじん忠実ちゅうじつであることから、忠義ちゅうぎの象徴とされています。真面目まじめ誠実せいじつという意味が込められています。

 が表しているのはいのししです。猪のにくは「万病まんびょうく」とかんがえられていたことから、無病むびょう息災そくさいの象徴とされてきました。また、「猪突ちょとつ猛進もうしん」という言葉ことばがあるように、ひたすら目標もくひょうかって猛烈もうれつすすむむ動物なので、一途いちず情熱的じょうねつてきという意味が込められています。

感想

 「干支えと」とは、きのえきのとひのえひのとつちのえつちのとかのえかのとみずのえみずのとじゅっ種類しゅるい要素ようそからなる「十干じっかん」と、うしとらたつうまひつじさるとりいぬ十二じゅうに種類しゅるい動物どうぶつからなる「十二支じゅうにし」とをわせた「十干じっかん十二支じゅうにし」をりゃくした言葉ことばです。

 10と12の最小さいしょう公倍数こうばいすうは60なので、古代こだい中国ちゅうごくでは、その「十干」と「十二支」とをそれぞれ組み合わせたかずである“60”を周期しゅうきにして、こよみはじめとした、時間じかん方位ほうい角度かくど、ことがらをあらわすために使つかっていたのですが、その暦法れきほうじょう用語ようごとしての「十干十二支」をみじかくしたものが、現代げんだいでも使つかわれている「干支」の始まりだとされています。

 つまり、「干支」は「十干」と「十二支」の両方りょうほうを合わせたものだということです。

 「干支」といえば「十二支」と間違まちがって認識にんしきしていた方もおおいのではないでしょうか。

 そのとしの「干支」だけではなく、意外いがいにもおおくの場面ばめんもちいられているのが「十干」と「十二支」です。まれた年の「十干」と「十二支」を確認かくにんしてみると、より一層いっそう「干支」が身近みじか存在そんざいかんじられるかもしれませんよ。

まんが日本昔ばなし

十二支じゅうにし由来ゆらい
放送日: 昭和52年(1977年)01月02日
放送回: 第0107話(正月特番 Aパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 堀口忠彦
文芸: 沖島勲
美術: 堀口忠彦
作画: 近藤喜文
典型: 由来譚ゆらいたん
地域: 東北地方/中部地方(静岡県)


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最後に

 今回こんかいは、『十二支じゅうにし由来ゆらい』のあらすじと解説かいせつ感想かんそう、おすすめ絵本えほんなどをご紹介しょうかいしました。

 十二支じゅうにしは、まだ時間じかん概念がいねんがなく、天文学てんもんがくもなかった時代じだいから、こよみはか単位たんいとして使つかわれてきました。『十二支の由来』から、むかしひと知恵ちえ創造力そうぞうりょくおもいをせてみてはいかがでしょうか。ぜひれてみてください!

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