『しょじょ寺の狸ばやし』は、月夜の晩、和尚さんの三味線にあわせて、お寺の庭に集まった狸たちが腹鼓を打ち、浮かれ踊ったと伝わる民話です。
今回は、『しょじょ寺の狸ばやし』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介します!
概要
『しょじょ寺の狸ばやし』は、千葉県木更津市富士見にある證誠寺に伝わる「狸囃子の伝説」をもとにしたお話です。
群馬県館林市に伝わる『分福茶釜』や愛媛県松山市に伝わる『八百八狸物語』と並び、日本三大狸伝説の一つとして数えられています。
また、『しょじょ寺の狸ばやし』をもとに詩人の野口雨情が作詞、中山晋平が作曲して、大正13年(1924年)に童謡『証城寺の狸囃子』として発表し、昭和4年(1929年)に平井英子が歌ったことで、歌と共にお話も一躍有名になり広く知れ渡ることになりました。
童謡の『証城寺の狸囃子』は英訳され、昭和30年(1955年)にアメリカ人歌手のアーサー・キット(Eartha Kitt)が『Sho-Jo-Ji(The Hungry Raccoon)』という題名で歌ったことでアメリカでも有名です。
かつてテレビで一大ブームを作った『まんが日本昔ばなし』が、二見書房より新装改訂版で登場。『しょじょ寺の狸ばやし』のお話は『まんが日本昔ばなし 第10巻』の中に収録されています。あらすじ
むかしむかし、草木の生い茂る昼でも薄暗く薄気味悪い山奥に、しょじょ寺という古いお寺がありました。
この辺りには狸がいっぱいいて、夜になるとお寺へやって来ては、腹鼓を打ったり暴れまわったり、さらには一つ目小僧やろくろ首などの妖怪に化けるなど悪戯のしほうだいでした。
おかげで和尚さんがいつかず、お寺は荒れ放題でした。
ある日、みすぼらしい姿の和尚さんがお寺にやってきました。
この和尚さんは、少し変わっていて、汚いこのお寺をすっかり気に入ってしまいました。
狸の化けた妖怪にも驚かず、狸の腹鼓を聞くと自分も一緒になってお腹を叩き出しました。
最初はうまく音を鳴らすことができなかった和尚さんのお腹も、だんだんと良い音を鳴らすことができるようになりました。
しかし、あまりにもお腹を叩きすぎたため和尚さんは倒れてしまいました。
そこで、翌日から和尚さんは腹鼓の練習を始めました。
ある満月の夜、和尚さんと狸がお寺に集まり腹鼓合戦を始めました。
和尚さんの腹鼓が良い音をだすので、負けじと狸の親分も腹鼓を続けたところ、叩きすぎてお腹が破裂してしまいました。
和尚さんは大急ぎで薬を狸のお腹にぬって介抱しました。
その後も和尚さんと狸は腹鼓合戦を続けるようになり、すっかり仲良くなりました。
そして、今でも満月の夜になるとお寺から狸の腹鼓が聞こえてくるそうです。
解説
『しょじょ寺の狸ばやし』は、千葉県木更津市富士見にある證誠寺に伝わる伝説ではありますが、いつ頃に成立したのかは不明です。
子ども向けの多くの物語では、「最後にお腹が破裂した狸を和尚さんが介抱する」といった内容になっています。
しかし、證誠寺に伝わる内容は、「お腹が破裂して狸が亡くなる」という結末になっています。
その狸を供養するために狸塚が建てられ、現在も境内にあります。
感想
狸は、昔話にはよく登場する動物です。
狐と共に人を化かすのが特徴ですが、そのやり方はずる賢いといわれる狐に比べると、どこか単純で微笑ましいことが多いようです。
そんなところから、この『しょじょ寺の狸ばやし』では、月夜の晩、どこからともなく聞こえてくる祭囃子を、「狸囃子」というようになったのでしょう。
さて、友達とは、家族以外で特に深い関わりをもつ存在です。
友達関係は、共に学んだり遊んだりする中で、楽しいことや嬉しいことを共有したり、悲しいことや大変なことを助け合ったり乗り越えたりすることで深まっていきます。
友達と一緒に、仲良く活動することのよさや楽しさ、助け合うことの大切さを実感すると共に、互いの考え方を交え、理解し合う経験を積み重ねていくことが、信頼し合える人間関係を築いていくことにつながっていくのです。
よりよい友達関係は、豊かに生きる上での大切な存在として、人間を成長させるものであると考えます。
無邪気な和尚さんと狸の心の触れ合いを通して、仲良くすることの楽しさや大切さを『しょじょ寺の狸ばやし』から感じてください。
まんが日本昔ばなし
『しょじょ寺の狸ばやし』
放送日: 昭和51年(1976年) 02月14日
放送回: 第0036話(第0019回放送 Bパート)
語り: 市原悦子・(常田富士男)
出典: 表記なし
演出: 彦根のりお
文芸: 沖島勲
美術: 青木稔(スタジオユニ)
作画: 川島明
典型: 教訓譚・狸譚
地域: 関東地方(千葉県)
『しょじょ寺の狸ばやし』は「DVD-BOX第3集 第11巻」で観ることができます。
最後に
今回は、『しょじょ寺の狸ばやし』のあらすじと解説、感想、おすすめ絵本などをご紹介しました。
『しょじょ寺の狸ばやし』は、和尚さんと狸の心の触れ合いを通して、よりよい人間関係が生きていく上で大切なことと教えています。ぜひ触れてみてください!